医院の事才能がものをいう仕事において。[2022/10/13]
東京で4つ歯科医院を運営しておりますハプラス歯科の木村と申します。これまで15年のキャリアの中で、勤務医時代を含めましてだいたい100人くらいの先生と仕事して、何かしら話したり助言したりしてきました。現在のハプラス歯科も先生が増えて、10人くらいの先生で診察しています。みなさんそれぞれに、魅力のある先生たちです。これまで色んな先生を見ていて、うまい・下手もありましたし、伸びた、伸びなかったもありました(うちの歯医者は真ん中より下の技量の先生には早めにご退場いただいています)。そのことについて考察したいと思います。
先日ラジオで作家の秋元康さんが喋っていて、興味深いことをおっしゃられていました。
「歌手が歌ってうまい下手というのは、その人の音程が狂わないとか、拍の通りに歌えるかとか、そういう問題ではない。聞いていて何とも心地よい琴線に触れる音色、みたいなのが出ているかどうかで決まる。それは努力どうのではなく、ほとんどが才能の要素である。
同じことが役者の演技にも言える。その役者が脚本を読んで、たとえばイスから立ち上がる時に、どのくらいの間をおいてから立つかは、教えてどうこうできるものではない。イスの立ち方一つでも、その演技は努力でどうにかなるものでなくほとんどが才能で決まる。」
上記のような事をおっしゃられていまして、さすが数多くのヒットを手がけた秋元さんと納得し大きく感銘を受けました。言いづらいことをさらりとおっしゃられていますが、芸能の仕事は努力よりも才能が重要ということになります。
芸能に限らず、世にある数多の職業でも、実はその出来不出来を左右しているのは努力よりも才能なのかもしれません。
例えるとこんな感じです。
お花屋さんがどんな花を何本どう選んでアレンジし素敵な花束を作るかは、ほとんど才能やセンスの問題。
書道家の方が、どんな半紙と筆を使いどのくらい墨をとって書を描くかは、才能で決まる。筆圧や字体など、逐一教えられるものでもない。
写真家の人が、被写体をどのくらいに切り取って光をどの程度入れて明度を決めて写真を撮るかに、写真家の才能があらわれる。
お寿司屋さんが、どの大きさに切ったネタにどのくらいシャリをどの程度の圧で握って手の温もりをどのくらい寿司に伝えるかなどが、寿司の旨い不味いになる。それは才能の世界。
営業の人が、どんなタイプの顧客にどの程度の見積もりを作ってどんなタイミングでどのくらい押して営業かけるかは、才能が重要。
その他、音楽家、舞台人、画家、書家など芸術家、作家、俳人など文壇の人、お寿司屋さんだけでなく料理人全般、スポーツ選手。芸能人。学校の先生。研究者、発明家、科学者。サラリーマンでも営業だけでなく、計数センスが問われる経理の人。気を利かせないといけない秘書のかた、庶務や総務のかた。結局は才能なのかもと思います。
そして歯科の世界でも同じことが言えます。悲しいほどに才能がものをいう仕事です。
1本の歯を削る時に、どのハンドピースとバーを用いてどのくらい注水して圧をかけて何ミリ切削するか、どんな形態のバランスにするか、支台歯形成一つとっても才能ある人ははじめから違います。無い人はずっとしんどい。印象採得や補綴調整、矯正やインプラントなど外科はもっとセンス現れます。
所詮努力が追いつかない才能の壁は、厚く高く絶望的です。
つづく。